文楽探検PART17「文楽に遊ぶ」2014年02月03日

 昨日、家内と二人で西宮ガーデンズで過ごした後、すぐ近くのプラレホールのイベント「文楽に遊ぶ」で文字通り遊んだ。
 初めて入場したプラレホールは300席もある立派なホールだった。有間皇子公演の舞台となる山口ホールとの落差を痛感してしまう。14時の開演時には客席はほぼ満席となった。さすがに「くぐつ師発祥の地」の文楽セミナーである。
 この催しのタイトルは「西宮文楽探検PART17」となっている。毎年この時期に開催され今回で17回目とのことだ。それだけでも驚嘆に値する。昨今、大阪市長の安易な商業主義の施策で入場者不足が何かと話題の文楽である。どっこいこの西宮の地ではこうした地道な文楽紹介イベントが奏功し裾野を広げているかに思えた。
 催しは、第1部の舞台裏話「文楽の小道具」と第2部の「文楽ぜみなーる・お園あれこれ」&上演「『艶姿女舞衣』酒屋の段より・お園のさわり」で構成されていた。第1部は、国立文楽劇場の小道具担当・森永伸さんによる持参の小道具の数々を披露しながらの解説だった。第2部は、吉田和生さんを中心とした3人の人形浄瑠璃文楽座技芸員による解説と演目のさわりの上演だった。
 感想を端的に述べれば飽き足らなかったということになる。「冗漫」とう印象が拭えなかった。小道具の解説に60分は長過ぎる気がした。さわりの上演も、著名な人形遣いの演じ方の違いを表現するため同じ人形で同じ場面を二度繰り返すという趣向だった。素人目にはその違いはよく分からないし、観客の多くはその違いを知りたいというニーズも少なかったと思う。違う演目を人形を変えて演じた方が遥かに観客のニーズに適ったのではないか。例えば「艶姿女舞衣」の「お園の艶」だけでなく、「国性爺合戦」の「和藤内の強さ」も紹介するというように、演目と人形の違いで文楽の芸術性の豊かさを表現してはどうか。
 実は、こんな感想を抱いたのには背景がある。12年前に国立文楽劇場で同様の趣旨の催し「文楽鑑賞教室」を観て大いに感動したという伏線があった。http://www.asahi-net.or.jp/~lu1a-hdk/nikki-02.06.htm その記憶との落差が大きかったことが今回の辛口の感想になったことは否めない。
 それでも二回目の文楽鑑賞者である素人の私の目から見ても、「演じ方の違いを表現する」という趣向は観客視点ではなく演者視点のような気がしてならない。「伝統芸能への安住」という大阪市長の短絡的な批判に組する気は毛頭ないが、観る側のニーズという想像力は文楽の維持発展の上でも欠かせないと思う。
 半面で、観客たちが舞台に上がって数々の小道具を手に取ってみるとか、観客との質疑応答とか、子どもたちや外人の若者が舞台上で人形を操ってみるとかの観客を巻き込む趣向があった。比較的小規模のホールでのこのイベントならではの意欲的な試みには拍手を送った。