文化プロデューサー河内厚郎氏の講演2014年06月07日

 昨日、西宮文化協会の定例文化講演会を受講した。講師は神戸夙川学院大学教授の河内厚郎さんで「愛新覚羅溥傑と嵯峨 浩」をテーマとした90分の講演だった。
 受講し終えて二つのことを思った。ひとつは初めて受講した講師・河内厚郎さんのキャラクターのユニークさだった。「有名人が大好きで、何としても直接会って話したいというミーハーです」とのっけから臆面もなく吐露される。「有名作家の百冊の本を読んでも、一度でも会った人には敵いませんから」とも。とはいえご自身が西宮在住の著名人である。文化プロデューサーにして評論家であり大学教授も勤める傍ら、阪神学を提唱し近畿の各自治体の文化行政面での数々のアドバイザー役をこなされている。原点は「人が好き」ということのようだ。「郷土史研究では属地主義とい立場が主流のようだが私は属人主義が好きです」とキッパリ。郷土西宮のゆかりの著名人やその背景を形作る文化風土へのこだわりが根底にある。それが阪神間での様々な文化イベントのプロデュースに繋がっていると思われた。自らをさらけだしながら軽妙なトークでその信条を展開され、何ともユニークで独自の世界が繰り広げられた。
 今ひとつは、清朝最後のラストエンペラー(溥儀)の実弟である愛新覚羅溥傑の一家の物語を初めて身近に知ったことだ。個人的には清朝末期の皇帝の歴史的役割を思えば無関心という以上に遠ざけていた観のあるテーマだった。今回の「愛新覚羅溥傑と嵯峨浩」というテーマは、ひとえに溥傑・浩夫妻の次女・嫮生(こせい)が今も西宮市在住であるという講師の西宮ゆかりの著名人探訪に由来する。嫮生の母・浩は京マチ子主演で映画化もされた自伝「流転の王妃」の著者である。嵯峨侯爵家の長女として生まれ、満州国のバックボーンであった関東軍の主導で皇帝・溥儀の実弟・溥傑に嫁ぎ数奇な運命を辿った。嫮生の姉・慧生(えいせい)もまた学習院大学の同級生と心中(天城山心中)するという数奇な運命を辿っている。唯一、嫮生だけが叔母の嫁ぎ先である神戸の福永家の次男と結婚し5人の子どもをもうけ平穏な人生を今尚歩んでいる。史実の一環として記される人物像とは別に、歴史に翻弄された生身の人間の苦闘の人生を垣間見た気がした。