NHKスペシャル「私たちのこれから・雇用激変」2015年10月25日

 NHKスペシャル「私たちのこれから・雇用激変 ~あなたの暮らしを守るには~」を観た。私たちの国がとんでもない社会になりつつあることを思い知らされた。冒頭、「雇用の二極化」の悲惨な実態が突きつけられる。今や全体の37%にまで膨れ上がった非正規雇用の低賃金と、いつ解雇されるか分からない雇用不安。他方で正社員は非正規雇用増のしわ寄せを受け過酷な長時間労働を強いられている。その結果、長期休職や退職に追い込まれる事例が激増している。
 「雇用の二極化」がもたらすものは中間所得層の激減である。それは消費を支えていた層の縮小に伴う経済悪化と税収減を招くことになる。「中間層が消えた活力なき格差社会」の到来である。その結果、老後破産が相次ぎ、それを支えるはずの社会保障が税収減から危機を迎えるという最悪のシナリオが浮上する。これが小泉改革に始まりアベノミクスに引き継がれている新自由主義的施策のもたらした悲惨な現実である。
 番組は、こうした現状を伝えるとともに、暮しを守るための処方箋を模索する。二極化する雇用の中間的な選択肢として導入が試みられ始めた「限定正社員」が紹介される。正社員ほどの労働条件は得られないものの条件アップと雇用安定が確保される。非正規雇用者の登用の受け皿としては評価できるものの、正社員の限定社員化のための手法という懸念もある。番組中の「視聴者ライブ投票」では6割の視聴者が「不安」という意向を示した。それだけ今日の企業側の意図の狡猾さが浸透しているということだろう。
 他方で、都市近郊自治体のユニークな住宅支援策として奥多摩町の「空家バンク」が紹介される。空家を行政が支援して所有者と利用者の仲介を行う取組みである。今後ますます増加する空家は所有者にとってもその維持管理は経済的にも負担が大きい。他方で低所得層の住宅問題は深刻化している。都市近郊の空家問題を双方のニーズを仲介する施策はひとつのヒントを示唆していると思えた。