高橋克彦著「天を衝く」②2015年10月08日

 高橋克彦著作の全三巻「天を衝く」の第2巻を読んだ。第1巻が宗家の南部家の棟梁が短期間に2代続けて不審死することで内紛が一気に表面化する場面で幕を閉じた。
 第2巻は、南部家の内紛が九戸政実と敵対する南部信直が宗主となる形で決着する展開で幕を開ける。自らの類い稀な力量が狭い南部家の中ですら受け入れられないまま北の鬼・政実は領土の南に勢力拡大をはかり南部家からの自立をめざす。
 政実が狭い南部で煩悶している同じ頃、日本の歴史は大きく塗り替えられつつあった。織田信長が天下統一を目前にして本能寺の変で倒れ、その後を継いだ豊臣秀吉が着々と統一の歩を固めその矛先は奥州にも向けられつつあった。
 南部家棟梁・信直は、いち早く秀吉と結び南部家の安泰をはかると同時に政実を牽制する策を達成する。秀吉の数の力で臣従を迫る手法を潔しとしない政実は、陸奥の精神の自立をめざして南部家との決別を決断する。
 秀吉の小田原攻めが始まった。奥州各地にも参陣を求める書状が届けられ、秀吉の代官の役割を喜々として受入れた信直は、政実に対しても圧倒的優位に立つ。秀吉は小田原城制圧を果たした直後に、奥州仕置きを実行するため会津に軍を進める。領地没収、配置換え、検地等の苛酷な奥州仕置きで奥州の勢力図が相次いで塗り替えられていく。
 奥州仕置きを終えて秀吉軍がわずかの軍を駐留させて引上げた時、伊達政宗の使嗾とおぼしき反秀吉勢の蜂起が勃発する。奥州代官を自認する信直の動揺を描きながら第2巻が幕を閉じる。それは最終巻に向けての波乱の幕開けを告げているようだ。