知人の直木賞作家・車谷長吉氏の評価2021年09月25日

 最近知り合った知人からメールを貰った。著作と歴史という共通の趣味で意気投合した方である。メールは贈呈した私の自叙伝掲載の小中高校の級友である直木賞作家・車谷長吉氏との交遊録についてのコメントだった。
 
 「自叙伝掲載の車谷長吉氏について興味を持ち、彼の小説『赤目四十八滝心中未遂』を読みました。久しぶりに読み応えのある小説でした。最後が心中未遂に終わるところは、おっしゃるように、やや物足りなさを感じますが、切なくて”極上”の太鼓判を押して他人に紹介できます。それと車谷という作家に興味を持ちました。おそらく、自分の弱さから普通の社会生活に挫折し、ほとんど一文無しになったようですが、それを正当化するため”反社会的毒虫”などと強がっているだけで、実は優しい、人を傷つけられない方のように感じます。彼の朝日新聞での人生相談をまとめた本も購入し読み出しましたが面白いですね。頂いた自叙伝を通して久しぶりに、変わった作家を見いだせました。」

 車谷氏の人物評を「実は優しい、人を傷つけられない人」という見方になるほどと思った。私の級友仲間では、人を傷つける作品群に彼の評判は芳しくない。ただ彼の三回忌の消息で夫人が一緒に巡った四国八十八か所のお遍路について「車谷は小説のモデルにしたひとたちを傷つけたお詫びをしたいと言って、ついてきてくれた」というコメントを新聞記事で読み気になっていた。知人の車谷氏の人物評はそのことに対する見方として頷けるものだった。