世界陸上2011の衝撃映像2011年08月29日

 固唾を呑んで観入っていたテレビ画面から衝撃的な映像が目に飛び込んだ。昨晩の9時頃だっただろうか。一瞬何が起きたのかわからなかった。直後にアナウンサーの絶叫を耳にした。「ボルトのフライイングですッ!」。さすがにプロだと思った。瞬時に事態を把握してテレビ画面の向うにいる何千万の視聴者に伝えたのだ。
 男子100m決勝は世界陸上2011で最も視聴者の関心を集めた競技にちがいない。何しろ今現在の世界で最も早いアスリートは誰かを決めるのだから。世界中の人々がその一瞬を見逃すまいとテレビ画面に釘付けになっていた筈だ。その決定的な場面で突発した衝撃的な映像だった。
 レース前のボルトは自信たっぷりのパフォーマンスを見せているかに見えた。前回大会で9秒58の驚異的な世界記録を出し国際レースで勝ち続けることで『伝説の人』になることをめざした。その自信たっぷりなパフォーマンスは自身に対する不安とプレッシャーを跳ね返すためのポーズだったのかもしれない。フライイングを誰よりも早く自覚したのも彼自身だったのだろう。直後の歩行中に上着を脱ぎ顔を覆うかのような仕種を見せた。その虚ろな視線が衝撃と絶望の深さを残酷に映し出していた。
 外見のしたたかさにもかかわらず25歳の若者なのだ。今大会に向けて浴びせられ続けた注目と期待が若者の精神に想像を絶するプレッシャーを及ぼしたことは想像に難くない。200m決勝があるというのは言いわけに過ぎないと思うし、彼自身もそう思っているだろう。それでもやっぱり「伝説の人」を目指してほしいと思う。
 昨日の競技でもうひとつの衝撃映像を目にした。男子400m予選である。両足義足のオスカー・ピストリウスが見事に準決勝に進出した。何よりも両足義足のランナーが健常者の最高の国際レースの舞台に立つ姿を目にしたこと自体が衝撃的だった。そしてその独特のランニングフォームで懸命に走る姿は感動的だった。世界レベルの健常者ランナーと互角以上の結果を達成したこともまた感激をもたらした。義足という補助具着用がアンフェアだという声もあったようだ。パラリンピックでは無敵の王者が、そうした声も含めた様々なハードルを乗り越えて健常者の国際大会に出場したことに文句なしに拍手を送りたい。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック