虹色の布陣2021年01月23日

 バイデン新政権の25人の閣僚人事が報道された。女性、黒人、アジア系の初めての副大統領ハリス氏をはじめとして12名の女性と13名のマイノリティのそれぞれ半数前後を占める布陣である。マイノリティの中では初めての先住民系、性的マイノリティ等かつてない踏み込んだ登用が目につく。閣僚が80%近くを白人男性が占めたトランプ政権からの大胆な転換である。
 移民国家アメリカはその成り立ちゆえに世界有数の多民族国家であり、国民は多様性に満ちている。そのことが統治の根幹に「民主主義」を据え、他のどの国よりも独自にその仕組みを発展させてきたという歴史を持つ。だからこそトランプ氏の退陣直前の民主主義の象徴でもある議事堂乱入への煽動という暴挙は、多数の国民の怒りを買った。
 新政権の多様性に満ちた布陣は、アメリカという国の成り立ちの素直な反映でもある。それは12年前にアフリカ系有色人種であるオバマ大統領を誕生させたアメリカの独自の民主主義の着実な流れの延長戦上にある。4年前のトランプ政権誕生にアメリカ的な民主主義の構造的な問題点を懸念した。選挙結果を頑なに受け入れないトランプ氏の悪あがきの中にその懸念は今なお残されている。
 新大統領就任式でハリス副大統領たち有力女性陣は紫色の装いで登場し、共和党との融和を訴え、紫色の船出を飾った。バイデン政権の多様性に満ちた虹色の布陣は、多様な人たちの多様な価値観を包み込むアメリカ的民主主義のステップアップを窺わせている。