噛み込めない”カムカムエヴリバディ”の消化不良2021年12月24日

 欠かさず観ているNHKの朝ドラ”カムカムエヴリバディ”が消火不良だ。カムカムと声掛けされても何とも嚙みこめないもどかしさがあった。この作品の構成は、「安子・るい・ひなたという三世代の女性たちが紡いでいく100年のファミリーストーリー」というオムニバス風の物語である。この構成自体に無理があるのではないか。1年の放送期間を三つに分けてそれぞれに完結させなければならない。第1話の安子をヒロインとする物語が唐突に中途半端に終わったという感がある。物語を構成する幾つかの逸話が説明不足で租借できないままに打ち切られた。
 安子の娘・るいの安子に対する仮借のない決別の言葉は、進駐軍将校との逢瀬を目撃したことだけでは説明不足である。安子もまたそれを受けていとも簡単にロバートとのアメリカ行きを決めてしまうのも納得性に欠ける。安子にプロポーズした義弟・勇もまた安子とロバートの関係を疑っていとも簡単に女中の雪衣と一夜を共にしてあっけなく結婚してしまう。この展開もまたあまりにも乱暴で急ぎすぎの演出としか思えない。最悪なのは、安子にとって最悪の結末をもたらした兄・算太の消息が触れられないまま終了したことだ。生家の和菓子屋再建のために安子が蓄えた資金を算太が持ち逃げしてしまう。雪衣に失恋したという推測を抱かせる描写はあるものの通常考え難い所業の説明は皆無だし、算太のその後の消息も語られない。視聴者には何とも収まりがつかない気分のまま放り出された。
 終末の展開以外は、丹念な展開でそれなりに好感をもって観ていただけに惜しまれる結末だったというほかはない。