真言密教の霊場・高野山の散策①2008年07月05日

 いつも土曜日もパート勤務の家内が珍しく金土日と休みになったという。昨日は岡山に彼女の両親を見舞った。今日は二人でどこかに出かけようということになった。かねてぜひ一度は訪ねたいと思っていた日帰りコースがある。霊場・高野山である。お手軽なバスの日帰りパックツアーという選択肢もあったがここはやはり個人ツアーの自由な旅がしてみたい。例によってガイドブックを買込みネット検索を駆使して綿密なプランを立てる。往復の特急電車の発車時間を考慮すれば約5時間半の山頂滞在である。この時間でめぼしいスポットをくまなく回ろうという魂胆だ。 
 8時過ぎに南海電車の難波駅に着いた。改札横のチケット販売窓口でひとり4千円の「高野山フリーサービック」チケットを購入する。難波~高野山駅間の往復乗車券、特急券、高野山内りんかんバスフリー乗車券、4寺院・施設拝観料のの2割引券、2店舗のおみやげ1割引サービス券がセットになっている。8時30分発のこうや1号に乗り込む。特急始発電車の車内はさすがに乗客もまばらである。南海高野線は、橋本駅までは平坦地を走る乗り慣れた通勤電車の趣きである。橋本駅を過ぎるとまもなく風景は一変する。紀ノ川に沿ってどんどん高度が上り次第に樹林が目につくようになる。「九度山」などの駅名を目にするといやでも真田幸村を思い浮かべてしまう。九度山駅からは紀ノ川とも別れ一気に高野山の山腹の急斜面を上っていく。約80分でと電車の終着駅「極楽橋」に到着。ホーム右手の高野山ケーブルに乗り換える。急勾配を途中で下りケーブルとすれ違いながら約5分で高野山駅に到着。
 駅前で奥の院行の南海バスが発車を待っていた。九十九折れの狭いバス道を10分ほど揺られて最初のバス停・女人堂で下車する。いよいよ霊場散策のスタートである。「女人堂」は女人禁制の頃の女性のための今に残る唯一の参篭所である。堂前には両脇を鬱蒼とした樹林が茂る立派な参道がのびている。数分も歩くと左手に「徳川家霊台」がある。拝観料を払って境内に入ると階段上に家康、秀忠二代の霊屋(たまや)二棟が建つ霊廟があった。霊台前の商店の間の小道に入り大門に向う近道を辿る。
 壇上伽藍の北側から西側を辿り大通りを西に向うと忽然と鮮やかな朱色の大きな建造物が現れる。重要文化財「大門」である。正面に回って見ると左右に阿形、吽形の巨大な金剛力士像が迫力のある面構えで睨んでいる。来た道を折り返し「壇上伽藍」の聖域に入る。境内には根本大塔を中心に金堂、御社、御影堂、不動堂等の堂塔が独自の思想で配されている。真言密教の思想を具現化し、胎蔵界曼荼羅の世界が立体的に表現されているといわれる。金堂、根本大塔の内部を拝観し境内の堂塔をカメラにおさめる。向かい側すぐ東の「霊宝館」に入館する。数多くの国宝、重要文化財をおさめた文字通り密教美術の宝庫ともいうべき建物である。四月から始まって今日が最終日だった特別展「童子とほとけ」では八大童子立像のひとつ不動堂所蔵の国宝・恵光童子が展示されていた。
 すぐ傍の高野山の宗教活動の中心である「大師協会大講堂」に立ち寄り、「六時の鐘」の前を通って「金剛峰寺」に向う。高野山真言宗の総本山である。風格のある正門をくぐると広々とした境内正面の本坊を中心に左右に広がった書院造り風の伽藍が美しい。右端の玄関口から内部の拝観に入る。大広間や持仏間の狩野派絵師による見事な襖絵を見ながら本坊、別殿、新別殿へと進む。新別殿では接待のお茶とお菓子を味わいながら休息する。新別殿を出るとすぐ左手に石庭がある。別殿を囲む廊下から蟠龍庭と名づけられた国内でも最大級の見事な石庭を見て回る。
 バス通りに出てすぐ東にこの山頂都市の中心点とおぼしき交差点があった。交差点を北に向かいすぐ左手にガイドブック紹介の食堂「さんぼう」があった。間口は狭いが中は意外と広い落着いた店だった。精進花篭弁当(2100円)を注文する。もちろん生ビールの注文も忘れない。野菜の天婦羅、胡麻豆腐、刺身こんにゃく、山菜等の旬の惣菜6品に吸い物と麦や大豆の入ったご飯が付いている。滋味豊かで素材を引き立てたこれぞ精進料理といった味わいだった。

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