ガウディーのバルセロナ(スペインの旅二日目)2010年11月16日

 スペインツアー二日目の朝をバルセロナのホテルで迎えた。バルセロナはイベリア半島の西の端に位置し地中海に面したスペイン第二の都市である。ホテル前には地中海が広がっている。朝食前に家内とホテル周辺の散策に出かけた。ヤシの並木の向うの日の出前の地中海の海岸線と水平線が美しい。
 8時半、バルセロナ観光に向けて52人乗り大型バスが出発する。添乗員、現地ガイドを含めて総勢18名である。ほとんどのご夫婦が2列席にひとりで席を占め旅先のかすかな孤独を確保する。ツアー最初のスポットはあの余りにも有名なアントニオ・ガウディーのサグラダ・ファミリア聖堂だった。下車したバスの目の前にその迫力のある威容が聳えていた。今尚建造中の建物周辺には幾本もの高いクレーンが取り付いている。命綱をつけて壁に張り付いた職人たちの姿すら遠望できる。四年前にひとり旅した娘は塔の上方まで階段を上ったと言っていた。ところがガイド情報では「強風で今日はエレベーターが休止中で昇れない」とのこと。還暦過ぎのツアーグループに階段利用の選択肢は用意されなかったようだ。開場直後のまばらな人影の堂内に足を踏み入れた。そこは予想を越えた巨大で厳かな白亜の空間だった。いくつもの長大なアーチが鮮やかなステンドグラスの窓を要して空間を形づくっている。おりしも地下聖堂では地域の信徒たちを前に朝のミサが営まれていた。地下展示場にはガウディーの肖像をはじめ聖堂の設計図や完成後の石膏模型が陳列されていた。
 続いてガウディの手になるグエル公園を訪ねた。独特のカーブで縁取られた中央広場を降りると、広場が多くの列柱で支えられていることに驚かされる。列柱が支える天上のモザイク画が美しい。公園のあちこちで大道芸人たちがパフォーマンスを演じている。ガウディー作品が市民に溶け込んで息づいていた。車窓からカサ・ミラやカサ・バトリョなどのガウディー建築を眺めた後、コンサートホールとして今尚現役の建築物であるカタルーニャ音楽堂の巨大で壮麗な外観を観た。
 昼食はヨットハーバーに隣接したシーサイドレストランのシーフード・パエリアだった。サングリア(赤ワインのオレンジジュース割)、カヴァ(シャンペン)の飲物に野菜サラダの前菜の後、パエリアが運ばれる。イカやホタテが混ぜ込まれたパエリアに大海老やムール貝が載せられている。昼食を終えてバルセロナを後にした。バルセロナ観光を終えて感じたのは1852年生まれのガウディーというひとりの偉大な建築家の存在感である。未完のその作品は今尚後継者たちに引継がれ、その業績は世界中から観光客を集めている。
 バルセロナから地中海沿いに南西100kmほどの所に古都タラゴナがあった。高速道路を走るバス車窓からローマ時代の水道橋が見えたと思ったらすぐに町に入った。町の南端の岬で下車した先に「地中海のバルコニー」と呼ばれる展望広場があった。まさしく絶景だった。東側の眼下にはローマ時代の円形競技場があり、南にはコバルトブルーの地中海と真っ青に澄み切った空が地平線で区切られていた。
 再び高速道路を駆って長距離移動となる。地中海沿いを南西に3時間半ほどで二日目の宿泊地バレンシアに到着。ホテルはベストウェスタン・アルブフェラというバレンシア郊外の広大なショッピングゾーンの一角にあった。チェックイン後、周辺を散策しカルフールの巨大店舗に入り込んだ。売り場から出ようにもレジで遮断され買物客以外ははるか向うの入口まで戻らねばならない。やむなくお土産チョコを少し買ってレジに並んで驚いた。前の二三人の客のショッピングカートには山のような買物が積まれていた。時間を気にしながらようやくカルフールから脱出した。ホテルの夕食を済ませ9時半頃に自室に戻った。二日目の夜は何事もなく無事安らかな眠りを獲得した。