エンディング・ノート2008年06月21日

 エンディング・ノートという出版物がある。出版元はNALCナルクというシニアを主体としたNPO法人である。私の手元には4年前に発行されたエンディング・ノートがある(A4版48ページ・税込価格1050円)。「生前に自らの死について準備をし、遺される人へのメッセージとして書き残す」ための書込み用の書式集である。 
 数年前にこの本の紹介記事を読んだ時、「目からうろこ」のカルチャーショックを覚えた記憶がある。一般には生前に死を準備することを取り上げることには抵抗があるものだ。しかし歳を経るに従い、考えたくなくとも否応なく「その時」の準備が必要なことを思い知らされることになる。この本はそうした現実に真正面から向き合い、「その時」に当たって遺された者たちが安心して対処できるよう準備することはあなたの思いやりでもあると説く。
 内容は「私のこと」を、経歴や思い出によって語り、「私の家族へ」として「介護・看病、病気告知、遺す言葉、遺言」についての考え方を述べ、家族の記録(家系図、親戚・知人の住所録、慶弔記録)や家庭経済の記録(資産や権利関係、各種のカード、借入金、生命保険他の各種保険等)、死亡時の対応(連絡先、葬儀、法要、お墓の要望)についてのメッセージを記載するようになっている。それぞれの項目ごとに法的な考え方や事例集等の参考データが添えられている。
 死と向き合うことは生を考えることでもある。自らの歩みを振り返り残された人生を考える。エンディング・ノートは、待ち望んだリタイヤ後の豊穣の時間をいかに過ごすかを冷静に見つめ直す絶好のツールなのかもしれない。遺される子供たちに何を伝え何を託すかについて夫婦で語り合う格好の話題を提供してくれる筈だ。そろそろ白紙の書式に書込みを始めようと思う。
 ちなみにナルクは、元松下電器産業労組の委員長だった高畑啓一氏が創設し会長を務める組織である。私の友人を通じて以前にナルクの「東海道五十三次ウォーク」の配布ビラのイラストを依頼され寄稿したことがある。