認知症サポーター要請講座2009年03月04日

 社協支部主催の認知症サポーター養成講座を受講した。自宅から徒歩20分の郷土資料館の大会議室には数十名の参加者がつめかけていた。中高年主婦や高齢男性が中心である。認知症に関心を寄せる層を代表しているのだろうか。開会直前の入室で、唯一の空席だった最前列の右側テーブルに着席した。隣りのテーブルにはスヌーピーのぬいぐるみを抱いた高齢のおばあちゃんを挟んで中高年の女性二人が着席している。 
 講座が始まると隣りテーブルの50代の女性が講師として紹介された。隣席のおばあちゃんは彼女の実母だった。「母の介護体験談」と題する講演は、93歳の実母の介護を始めて9年目を迎える講師の赤裸々で胸を打つ体験談だった。「早くに父親を亡くし仲の良い姉妹のような母娘で暮らしてきた。その母に自分が忘れられようとしていることを突然気づいた。受入れがたい悲しさだった。母の勘違いを正し、時に口論となる日々が始まった。そんな時ヘルパー講座で目から鱗のような言葉を聞いた。『あなたの世界に連れ戻すのは無理です。あなたがお母さんの世界に行ってあげて下さい』。進行する認知症の介護に疲れた時、認知症患者の家族会・さくら会に出会った。出口の見えないトンネルで一筋の明かりを見た思いだった。『いつでも良い介護者ではいられませんヨ』という励ましに救われた。今では母と私は合わせ鏡だと思っている。私が笑えば母も笑う。私が涙すれば母も悲しむ。そんな時、母は私を忘れていないと慰められる」。
 認知症サポーター向けのビデオを見た後、隣席の60代のもうひとりの女性による講演が始まった。講師はこの講座のキャラバンメイト(講師)でNPO法人つどい場さくらちゃん(介護者支援組織)代表である。過去10年間に家族3人を看取った体験に裏付けられた説得力のあるスピーチだった。「認知症は初期のケアが大切だ。しかし多くの場合、認めたくないという家族の気持ちがそれを見逃してしまう。身内や近所に知られたくないという気持ちが家に閉じ込めますます悪化させている。介護する方もされるほうもストレスが溜まっている。介護者も辛い時には泣けば良い。妻を介護する夫の介護は『償い介護』と言われ、逆の場合は『仕返し介護』と言われる。男性の介護はしばしば生真面目すぎて時に深刻な事態を招く。介護には適度ないい加減さが必要だ。高齢化社会と言われながら街にお年寄りを見かけない。安易にデイサービスやショートステイに頼りすぎていないか。患者と一緒に車椅子で街に出かけよう。街に介護が必要なお年寄りでも過ごせるつどいの場を作ろう。街の人たちのサポートが必要になり、ふれあいが生まれる」
 身につまされ、気づかされ、多くの学びを得た貴重な90分だった。