野分けの跡2011年09月08日

 早朝ウォーキングで見かけたそれは、「野分」という言葉にピッタリの風景だった。住宅街の麓の小規模な稲田にくっきりと描かれていた。稲田の真ん中をでっかくて幅の広い筆を走らせたかのような一筋のへこみが目に飛びこんだ。なぎ倒された稲穂の先は土壌に頭を垂れてうずくまっていた。死者、行方不明者合わせて110名もの犠牲者をもたらした台風12号の小さな爪跡のひとつでもある。
 「野分(のわけ)」は、台風の古語である。「野の草を吹き分ける強い風」から呼称された。イギリスなどで報告されているミステリーサークルを思い浮かべた。穀物が円形に倒された現象だ。サークルの作製者は一時は宇宙人ともUFOとも騒がれた。結局、イギリス人の老人二人組がサークル製作者と名乗りをあげて一件落着したようだ。
 日本の野分は、源氏物語にも登場し、二百十日の頃に訪れる「季節の風物詩」の趣きもあった。ところがそれは今回の台風12号でも思い知らされたように自然が下す仮借のない猛威でもある。

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