別冊太陽「藤沢周平」2011年11月09日

 日曜日に山口の文化祭を見に山口センターに行った際に、久しぶりに図書館分室に立ち寄った。入口すぐのラックに置かれた本の「藤沢周平」の文字が目に飛び込んだ。藤沢周平の文字に他愛もなく反応してしまう。すぐに別冊太陽「藤沢周平」を手にして貸出手続きのためカウンターに持参した。
 気にいった記事や作品ゆかりの写真やイラストに目を通し、藤沢ワールドを満喫した。巻頭の田辺聖子さんの藤沢評が良かった。「波乱のストーリーであっても、文章はつねに静謐で、抑制が効いている。さりながら、その底からたちのぼる情味の香気が、読者を酔わせるのであろう」。多くの読者の藤沢作品に対する気分を見事に掬い取っている。
 最初の特集は「海坂(うなさか)ものがたり」である。藤沢ファンなら誰もがナルホドと頷く筈の幕開けである。「北国のとある小藩に名づけられた”海坂”江戸時代の藩士が描かれる作品の多くは、この海坂藩であり(略)、そこは作者の郷里、庄内の景色と重なる」。海坂にまつわる多くの作品が解説され、読者が読んだ筈の風景が次々に蘇る。
 心に沁みる藤沢語録があちこちに紹介されている。「方言の後ろには気候と風土、その土地の暮しがぎっしりと詰まっている」「私が書く武家物の小説の主人公たちは、大ていは浪人者、下級武士、次三男などである」「市井小説というものを、私は普遍的な人間性をテーマにした小説と考えている」。
 慌ただしい日々が続いた週の、ぽっかり空いた一日を「藤沢周平の世界」に浸って過ごした。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック