「大阪人権博物館」を見学した2012年07月26日

 昨日の午前、西同協の社会教育部会の「リバティーおおさか」見学学習があった。橋下大阪市長による補助金カットを巡って存続が取りざたされている施設でもある。ぜひ見学したいと思った。午前中は所用があり、夕方に労働委員会の会議だったので、事前に事務局に連絡し、3時頃の単独見学を了承してもらった。
 JR芦原橋駅を下車し、徒歩10分ほどで博物館に到着した。受付で西同協からの見学を申告して入館する。特別展示室で開催中のハンセン病の特別展示を見学した後、常設展示場を見て回った。
 三つのゾーンに分かれている。ゾーン1は「いのち・輝き」をテーマに命の大切さが訴えられている。HIV/AIDS、いじめ、DV、児童虐待、性的少数者などがコーナーごとに展示されている。ゾーン2は「共に生きる社会をつくる」をテーマに、さまざまな文化や生き方を示しながら共に生きる社会が訴えられている。在日コリアン、ウチナーンチュ(沖縄人)、アイヌ民族、ハンセン病回復者、障害者、ホームレス、被差別部落などのコーナー展示がある。ゾーン3は「夢・未来」をテーマに将来なりたい職業を考えるという趣旨から、労働の現状や大阪の技術や伝統産業が紹介されている。
 ゾーン1、ゾーン2は人権や差別についての解説や現状を表現したもので展示手法に課題は残るものの納得できるものであり学習にもなった。とりわけゾーン3の次の「証言の部屋」の展示は心打たれた。差別や人権に関わる様々な課題に向き合い闘った人たちの実名での証言の数々である。問題はゾーン3である。人権博物館という施設での展示の意図がわからない。どうやら橋下氏の府知事時代の視察の際の「夢や希望に向かって努力しなさいと教える施設に」という注文に館側で急遽対応したもののようだ。このゾーンだけいかにも浮いている筈である。
 橋下氏のこうした公共施設の展示の在り方にまで踏み込んで指示する意図は次のような発言に窺える。「補助金を受けないなら目的は自由。受ける以上は決定権は僕にある。その権限を与えてもらうのが選挙なんで」。彼にとっては「選挙とは白紙委任」なのである。それは民主主義の多くの仕組みや在りようを著しく逸脱した独善的思考という他はない。首長が変わるごとに補助金を受けた公共施設の在り方や展示内容は変えられるということになる。公共施設にはその施設が本来果たすべき役割機能がある筈である。
 人権・差別の学習と同時に、公共施設の在りようについても考えさせられた見学だった。