女性も担ぎ手の名塩壇尻2012年10月14日

 名塩八幡神社の秋祭りに出かけた。西宮市立郷土資料館の「西宮の祭礼現地見学会」の案内パンフレットで情報を得た。集合地のJR西宮名塩駅に9時半に着いた。面識のある資料館スタッフに資料を貰い、一緒に名塩八幡神社に向かった。既に9時から神事が始まっており、先に着いた見学者はそちらに行っているとのことだ。
 名塩八幡の境内に勢揃いした壇尻を横目に、急勾配の石段を昇り本殿に着いた。既に神事は終わり、地元の世話役などの参列者が解散しているところだった。面識のある有馬稲荷神社の宮司さんがここの祭礼を司っている。挨拶をすると「お神酒を戴いて下さい。参拝の皆さんにお進めしています」との言葉に本殿脇でお神酒を戴いた。
 石段を降りる途中で下の境内に勢揃いした7基の壇尻の雄姿が目に入った。早速画像に納める。境内で出会った山口の知人と懇談していると、宮入りした順に宮出しが始まった。境内の東の端に陣取っていた南之町の壇尻が石段下に移動し、前後に二三回引き回しをする。その後、壇尻の関係者が本殿に参拝に行く。関係者の参拝を終えていよいよ宮出しとなる。壇尻を軋ませながら回転させ、境内出口の坂道をゆっくり下りる。この時、壇尻のチョウサイ棒(前方に張り出した曳き棒)に乗って運行の指揮をとるのが若頭(わかとう)である。
 同じ繰り返しで各壇尻の宮出しが続いた。驚いたのは3台目の大西町の壇尻の時だ。なんとあの若頭の晴れ姿をうら若い女性が担っていた。指揮棒のようなものを手にスピーカーのハンドマイクから威勢のいい掛け声をかけている。中々堂にいった指揮ぶりである。壇尻に乗っているのも小学生の女の子が多い。もちろん担ぎ手にも若い女性陣の姿が少なくない。
 境内で山口の知人と懇談していた法被姿の地元のオジサンに声をかけた。「名塩の壇尻は女性も参加できるんですね」。山口の壇尻は担ぎ手ばかりか女の子が乗ることすら許されない昔ながらのしきたりが頑なに今も守られている。「数年前からです。人手不足で背に腹は代えられませんから」という言葉が返された。壇尻を維持する名塩の旧地区は780世帯ほどである。8台の壇尻を1台当たり約100世帯で維持していることになる。担ぎ手対象の限られた年齢層を男子だけに限ってしまえば、これはかなりキツイ筈だ。祭を止めるかしきたりを改めるかの選択肢の前では自ずと結論は明らかだ。「背に腹は代えられない」事情である。
 揃いの法被を着た10人ばかりの西之町の若者たちが記念写真を撮っていた。前列で元気な笑顔のギャルの後ろで男子の顔は心なしか虚ろだった。そんな時代の流れを噛みしめながら名塩八幡神社を後にした。

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