水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」(その1)2014年08月04日

 一カ月ほど前に、知人から紹介された水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」の書評を読んでその感想をこのブログで記事にした。http://ahidaka.asablo.jp/blog/2014/07/06/7381233 そしてすぐにこの著作ともう一冊の広井良典著『定常型社会―新しい「豊かさ」の構想』の2冊をネット購入した。
 その最初の一冊である水野氏の著作を読み終えた。衝撃的で途方もない著作だった。200頁余りの新書版だが、久々に知的興奮を呼び起こさせられた。まさしく「目から鱗」のインパクトがあった。
 市場経済至上主義の新自由主義的経済政策が国民生活を根底から脅かしている。財政再建、構造改革、規制緩和の名の下に従来辛うじて維持されてきた国民生活の各分野のセイフティネットが相次いで破綻しつつある。その大義名分は何よりも景気回復であり経済成長である。グローバル資本主義が席巻する世界市場の枠組みの下での経済成長の鍵は、日本企業の徹底した競争力強化である。労働市場の規制緩和、法人税引き下げ、原発再稼働をはじめとして、企業のコスト削減のための官民挙げての施策があらゆる分野で推し進められている。
 新自由主義の先鞭をつけた小泉改革がもたらした格差社会等の国民生活の荒廃を追い風に民主党政権が誕生した。期待された民主党政権は自らのお粗末な政権運営の故にわずか3年で崩壊した。その後を受けて登場した自公政権は、またしても亡霊のようにアベノミクスと称する新自由主義政策を掲げ、経済成長至上主義をひた走る。
 どこかおかしい。何かが間違っている。そう思ってはいても明快な答えは見つからない。アベノミクスや新自由主義的政策の本質的な問題点を糺し、それに代わるべき方向性の提示が求められている。それが見えないもどかしさだけが募っていた。そんな気分の中で読んだのがこの著作だった。それは、そのもどかしさを見事に払しょくしてくれた名著だった。一回の記事で到底その書評の全貌は語れない。以下、随時更新していこうと思う。