「道場町誌」の貴重な情報2015年07月30日

 5年ほど前に知人に下山口在住で道場町出身のOさんという年配の男性を紹介され懇談の機会を得た。生まれ育った道場の昔話しを聞かせて頂いた。話しの最後に中座され所蔵の書籍を戴いた。2004年発行の道場町連合自治会編集の「道場町誌」だった。開講したばかりの公民館講座でいつか道場町を取り上げたいという私の意向を受けて、「その際にはぜひこの本をお役にたててください」とのことだった。
 以来、数年を経てこの秋にようやく「隣町風土記・道場」を開講する運びになった。テキストづくりの準備のため「道場町誌」をあらためて紐解いた。古代から近・現代にいたる道場の詳細な通史と様々な分野の紹介が実証的に記述され、資料的にも価値のある情報だった。この書籍がなかったら講座は底の浅い薄っぺらな内容になっていただろうと思う。あらためてOさんの好意に感謝し、秋の講座のご案内をしようと思っていた。
 ところが今日、下山口の知人からOさんが二年前に亡くなられたという情報を得た。今は奥さんと娘さんだけの暮らしになっているとのこと。講座の中で資料提供者であるOさんのお名前も紹介する予定だった。遺族の方にその点の了解も得なければならない。すぐにご自宅に電話した。電話に出て頂いた娘さんに5年前のいきさつをお話しし、今回講座でのお名前の紹介の許しをお願いした。「生前、父は故郷の道場をこよなく愛していました。その道場を公民館講座で紹介して頂けることや、そのお役にたてたことで名前を紹介して頂くのはいい供養になります。どうぞ自由にお使いください」とのことだった。その嬉しい対応に心からの謝意を伝えて受話器を置いた。講座をぜひ聞いてもらいたかった方の哀しい消息に始まったプチドラマの爽やかな結末だった。