長尾和弘・近藤誠著「家族よ、ボケと闘うな!」2016年06月10日

 福祉ネットや社協の取組み課題として「在宅介護」が差し迫ったテーマになりつつある。とりわけ認知症についての理解が不可欠だと思った。そこで認知症ケアに関する書籍を初めて読んだ。長尾和弘・近藤誠著「家族よ、ボケと闘うな!」である。
 著者二人が認知症や在宅介護に関する17のテーマについて往復書簡という体裁で持論を展開する。認知症医療に関する取り組み姿勢やスタンスは共通している。それは決して現在の医学会の主流ではない。むしろ異端と呼ばれそうな立場である。それにもかかわらず読み終えてその姿勢に共感した。
 我が国の認知症医療の主流は抗認知症薬の投薬をメインとした治療である。抗認知症薬には、少量から始めて有効量まで増量するという信じがたい使用規定がある。ところが規定通りに投与すると、患者によっては興奮や歩行障害などの副作用がしばしばみられるという。著者たちはこうした画一的な投薬治療や増量規定に異を唱える。
 長尾医師たちは昨年11月に「抗認知症薬の適量処方を実現する会」を結成し、厚労省はじめ各方面に働きかけていた。そして6月1日に厚労省から通達が出された。抗認知症薬の副作用が認知され少量投与を国として認めるといった内容で事実上の増量規定の撤廃である。
 認知症医療はまだまだ未開の分野のようだ。その治療は今後も紆余曲折があると思われる。そうした中で、今回の通達が長尾医師たちの目指す方向の確かさを裏づけていると思った。その方向とは煎じ詰めれば「投薬中心の画一的な治療でなく、個々人の病状や生活環境等を把握しながら多面的な治療や看護・介護を促す」ということのようだ。
 認知症ケアの入門書として的確な選択だったと納得した。

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