児童養護施設の体当たりの養育2012年07月07日

 昨日の午後、西同協の委員研修会に参加した。市立勤労会館ホールには定員の7割ほどの300名近い受講者が席を埋めた。学校やPTA関係の若いお母さんたちが多い。
 児童養護施設・三光塾施設長の瀧野施設長を講師に「三光塾での子供への関わり方」と題した講演だった。講演が始まると講師の右手にボランティアの手話通訳者三人が交替で同時通訳をする。手話ボランティアは全員、黒いシャツ姿である。なるほどこれなら胸の前で手話を伝える手指の動きがくっきりと浮かび上がる。黒シャツは手話通訳者の制服だと初めて知った。
 40前後のまだ若い施設長の講演は実践に裏付けられた感銘深いものだった。大学を出てすぐに三光塾に職を求め、以来20年に及ぶ児童養護施設という職場での実践者である。「何らかの理由で家族と生活できない子ども達のお家」には幼時から高校生まで40名ほどの子どもたちが一緒に暮らしている。そんな子どもたちと日々寄り添いながら暮らし続けた人の、実践に裏付けられた素晴らしい言葉が次々と繰り出される。
 「気持ちを言葉にすること。言葉を通じて相手は分かってくれることを学んでくれる」「自分のことをわかってくれる人がいることを知ってほしい」「君のこんな素晴らしいことを知っているよ。そんな君に悪いことをしてほしくない」「自分の育ちを知ってくれている人がいることの子どもたちの安心感。そんな気持ちが伝わる時の喜び」「困らされた子どもほど『ありがとう』の一言に感激させられることはない」「通常の職場のようにかけひきや競争のない職場での真正面に向き合える仕事に感謝している」。
 家族と離れて暮らす子どもたちに寄り添って生きる児童養護施設という現場の実情を初めて教えられた。明るく語られた実情以上にもっと過酷で屈折したものがあるにちがいない。職員たちにとっては身をすり減らす現場でもあるのだろう。そんな現場を明るく前向きに受け止めながら体当たりで養育という役割を担ってきた人の貴重で示唆に富んだ体験談だった。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※なお、送られたコメントはブログの管理者が確認するまで公開されません。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック