M-1グランプリの凄味2008年12月22日

 昨晩、「M-1グランプリ」中継放送を観た。ここ何年か欠かさず観ている。確かに面白い。過去最多の4,489組というエントリーの頂点に立ったのはNON STYLEだった。ともに28歳の笑いの街・大阪出身のコンビだ。笑いのネタをアップ・テンポで息もつかせず繰り出す芸はさすがという他はない。スピード感溢れるボケとツッコミが絶妙の間合いで展開されていた。
 いくつか感じたことがある。ひとつはこのイベントに1万人近い若者たちが、恐らく自分たちの人生を賭けて挑んでいるという点だ。多くの若者たちを惹きつけている漫才という世界の魅力とは何だろう。学歴も資格も技術も容姿も問われない。自分たちのキャラクターと日々の精進と笑いのネタを日常生活から切り取る感性とお互いのコンビネーションが求められる。観客の「笑い」だけが唯一の評価のバロメーターである。まさしく公平な機会の下での実力だけが物を言う世界だ。不公平で過酷な格差社会に喘いでいる若者たちにとって挑み甲斐のある世界に違いない。
 今ひとつはこのイベントの企画性の高さだ。年1回のグランプリ開催に向けて毎回平等の選考方法で予選を勝ち抜いていく。出場資格はコンビ結成10年以内という点だけであり、その他のプロ、アマ、国籍などは一切問われない。事実今回の敗者復活戦の出場者をみても麒麟、ハリセンボン、南海キャンディーズ、髭男爵など過去の決勝進出組で今やテレビの人気者たちが名を連ねている。その彼らも見事に決勝進出を阻まれる世界なのだ。過去の実績や今の人気度も全く通用しない。今この瞬間の鮮度が試される。それだけにM-1の覇者のステイタスは年を追うごとに際立ってくる。漫才という芸の年毎の頂点をオープンな闘いの場を通して広い裾野から選び出すというこの一点に絞り込んだ企画性こそ評価すべきだろう。このイベントのプロデューサーであり実質的な主催者でもある島田紳助の手腕と企画力に目を見張らせられる。